魅力的なお店の紹介(実績店レポート)    出典は月刊ブランスリー お店拝見(2006年7月号)
小麦粉や種などの材料を知り、目的に応じて使い分けることの大切さを知った。
ベーカリーカフェ「ムッシュ イワン」

石窯の前にあるパンの陳列スペースから、入り口を臨んだ写真。田舎の温かさと都会の緊張感が同居した空間だ。
今年3月、東京・立川市の若葉ケヤキモール内にオープンした「ベーカリーカフェ ムッシュ イワン」。ホテルパンの父といわれた故福田元吉氏を師と仰ぐ小倉孝樹さんが総指揮をとる。

住所 東京都立川市若葉町1-7-1若葉ケヤキモール内
電話 042-538-7233
営業時間 午前10時〜午後8時
定休日 年中無休
最寄り駅 JR中央線・立川駅(バスで約10分)
店舗面積 約60坪(製造スペース約30坪、販売スペース約15坪、カフェスペース約15坪)
品揃え 約80品目
客単価 900〜1000円
日商 約40万円
スタッフ 14人(製造7人、販売常時平均7人)


パンの陳列スペースに面して大きな石窯(ツジ・キカイの平窯王)が設置されている。


仏産小麦粉を100%使用の「バゲットスワッソン」。


入り口から奥のパンの陳列スペースを臨んだ写真


カフェスペースとパンの陳列スペースをつなぐ位置にあるショーケースには、デニッシュ類やスイート系のパンなどが陳列されている。
石窯がある場所は劇場の舞台のよう

 「日本のホテルにパンを伝えたロシアのイワン・サゴヤン氏、そしてその教えを受け、日本のパンの基礎を築いた故福田元吉氏の思いを継承していきたい。それが私の原点です」
 ベーカリーカフェ ムッシュ イワンの取締役最高執行役員(COO)、小倉孝樹シェフはこう話した。
 同ベーカリーカフェは、「ナムコレッド」といわれる濃いワインレッドがイメージカラーだ。正面のドアの上に、ナムコレッドの「monsieur IVAN(ムッシュ イワン)」の看板。入店すると、右側がおよそ20席のカフェスペース。まっすぐに進むと、右手にデニッシュやスイート系のパンが陳列されたショーケースが続き、その向こうにパンの陳列スペースがある。客はまず、奥の、パンの陳列スペースまで進み、「ナムコレッド」に化粧された大きな石窯に出迎えられる。そこには、「バゲットフルート」「バゲットスワッソン」「石臼挽きカンパーニュ」など、主にハード系のパンが並ぶ。
 石窯がある場所は、「パンの焼成ショー」を行う劇場の舞台のようだ。焼き上がったパンは、すぐに陳列台や陳列棚に運ばれてくる。
 「パンの焼成ショー」を楽しみながら、パンを選んだ客は次に、「紅茶メロンパン」(150円)、「小倉あんぱん」(135円)などのスイート系のパンや、「ダノワーズフリュイ」(250円)、「ポワールルージュ」(210円)などのデニッシュ類などが収められたショーケースを左手に見ながら、入り口近くのレジまで戻ってくる。ショーケースを挟んで、スタッフと客の会話が弾む場面もしばしばだ。
 レジで清算をすませたあと、テイクアウトの客はそのまま店を出る。カフェスペースで飲
食する客は、パンやドリンクなどをトレーにのせて、席に着く。
 店内は、壁などのオフホワイトと陳列棚などの茶色がやさしく響き合う中で、イメージカラーの「ナムコレッド」がピリッと効いて、透明感のある空間になっていた。



フランス産の小麦粉をべースに数種類の小麦粉をブレンドした「バゲットフルート」。小倉さんが、最近フランスに行ったときに食べたバゲットからヒントを得て開発した商品だ。


フォカッチャ使用の焼き込み調理パンも豊富


故福田氏直伝の製法で作った「バタール」


木の枝にかけたような陳列方法の「オニオンベーグル」
「パンは結局のところ香りだと思う」

 小倉さんが師と仰ぐ故福田元吉氏から教わったことのひとつは、小麦粉や種などの材料を知り、目的に応じて使い分けることだった。
 「パンは結局のところ、『香り』なんだと思います」と小倉さんはいった。売り場にはそんな小倉さんが手塩にかけて作った様々なパンが並んでいた。
 「バゲットフルート」(190円)は、フランス産の小麦粉をべースに数種類の小麦粉をブレンド。ライ麦粉も5%配合している。ポーリッシュ法を採用。「フランスの粉のように灰分が多い粉は、ポーリッシュ法だとエグミがとれて、おいしさと香りだけが残ります」と小倉さんは説明してくれた。このパンは小倉さんが、最近フランスに行ったときに食べたバゲットからヒントを得て開発した商品だという。
 「バゲットスワッソン」(250円)は、「スワッソン」というフランスの小麦の粉を100%使用し、低温で長時間熟成させて作る商品。
 「オニオンベーグル」(140円)は、若いスタッフのたっての希望で商品化した。木の枝にかけたような形で陳列し、売り場に変化を与えている。
 「石臼挽きカンパーニュ」(550円、13ページにレシピを掲載)は、自家製の石臼挽き粉を40%配合。ライ麦粉などからおこした液種を使用し、深い味わいを出している。
 「バタール」(230円)は故福田元吉氏が作っていたものを忠実に再現した商品。
 「おやじさん(故福田氏)のパンは、今食べても全然古く感じません。いいものは時代を超えた価値を持っていますよ」(小倉さん)



ベーカリーカフェ ムッシュ イワンは、東京・立川市の若葉ケヤキモール内にある。洗練された雰囲気と同時に気軽に入れるカジュアル感もある。


ショーケースには、色鮮やかなデニッシュがたくさん並んでいた。


深い味わいがある「イギリスパン」(280円)は定番商品だ。


三重県産の青海苔がたっぷりと入った「青のりのリュスティック」(160円)


ショーケースの上に、おいしそうな「石臼挽きクロワッサン」(135円)がさりげなく置かれていた。


パンの陳列スペースには、製粉機が置かれていた。実際に小麦を挽いて、その粉を使用している。


売り場に出て、顧客にパンをすすめる小倉さん。セルフ方式の販売だけではなく、対面販売も導入したのは、顧客と会話をする機会を少しでも多くしたかったからだという。
30年以上前にすでに現在の最新の製パン法を実践していた人がいた。

1に粉、2に種3に技術


 小倉さんは、1975年、ホテルパシフィック東京に入社。そこで、出会ったのが、当時同ホテルのベーカー長だった故福田元吉氏だった。
 「いまは、リテールの人たちが力をつけてきて、フランスなんかから多くを学び、おいしいパンを作るための様々な技術が普及していますが、30年以上前にすでに、同じこと、いやそれ以上のことを独自に確立していた人がいたんです。例えば、『つき丸め』という工程は、ミキシングが終わったあとに、生地を麺台の上で休ませておいてから、パンチをして丸めて、フロアタイムをとるというものですが、これは、フランスから伝わったオートリーズ法に通じるものがあります」
 故福田氏の究極の目的は、香りを引き出すことだった、と小倉さんは感じている。
 「おやじさん(故福田氏)は、香りを引き出すために、小麦粉と種の研究にはとても熱心でした。『1に粉、2に種、3に技術』が口癖でしたね。『いい粉を見つけて、その特徴を引き出してやることが大事だ』といつもいっていました」
 ムッシュ イワンでは現在、小麦粉は全部で約16種類を、製品によって巧みに使い分けている。自家製の種も、4種類を使用。商品ごとに材料を吟味し、商品ごとの特徴を強く打ち出している。
 「おやじさんから受け継いだものをしっかりと実践した上で、自分なりのエッセンスを加えられたらいいなと考えています」(小倉さん)



自家製の石臼挽き粉を40%配合し、ライ麦粉などからおこした液種を使用した「石臼挽きカンパーニュ」



石臼挽きカンパーニュ

 【配合%】

石臼挽き粉(メッシュ250)‥40
モンブラン(第一製粉)‥60

▼ルヴァン種‥‥‥‥‥20
モルト‥‥‥‥‥‥‥0・4
沖縄の塩‥‥‥‥‥‥2・4
生イースト‥‥‥‥‥0・2
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥70

 【工程】

ミキシング‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥L8〜10分ML1〜2分

捏ね上げ温度‥‥‥25度C

一次発酵‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥27度C75%15分(パンチ)1時間30分(パンチ)45分
分割‥‥‥‥‥‥‥‥‥大型550グラム、プチパン100グラム

ベンチタイム‥‥25〜30分
成型‥‥‥‥‥‥‥‥‥大型はコルプ型、プチは布取り

ホイロ‥‥‥‥‥30度C75%1時間10分〜1時間20分

焼成‥230度C大型40分、プチ20分(共にスチーム注入)
*石臼挽き粉は、石臼で挽いた自家製のものを使用しているが、市販の石臼挽き粉を使用してもよい。また、石臼挽き粉は酵素活性が強いため、モルトは入れなくてもよい。

*フルーツやローストナッツを入れてもおいしい。
 ▼ルヴァン種
(液種)
 1日目
 【配合%】

ライK(ライ麦粉、三芳商店)‥‥100
モルト‥‥‥‥‥‥‥‥2
水‥‥‥‥‥‥‥‥120
 【工程】全材料を混ぜ合わせて、25度C70%24時間
 2日目
 【配合%】

1日目の種‥
‥‥‥100
リスドォル(フランスパン用粉)‥‥‥100
水‥‥100
 【工程】全材料を混ぜ合わせて、25度C70%24時間
 3日目

 【配合%】
2日目の種‥‥‥‥‥100
リスドォル‥‥‥‥‥‥100
水‥‥‥‥‥‥‥‥100
 【工程】全材料を混ぜ合わせて、25度C70%24時間    4日目

 【配合%】
3日目の種‥‥‥‥‥100
リスドォル‥‥‥‥‥‥100
水‥‥‥‥‥‥‥‥100
 【工程】全材料を混ぜ合わせて、25度C70%24時間
 5日目
 【配合%】

4日目の種‥‥‥‥‥100
リスドォル‥‥‥‥‥‥100
水‥‥‥‥‥‥‥‥100
 【工程】全材料を混ぜ合わせて、25度C70%24時間
*この時点で完成。それ以降の種継ぎは、液種100%、リスドォル100%、水120%を混ぜて、25度C70%で24時間置く。


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